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2026年09月23日
コラム

守口の歯医者でできる 口腔機能低下症の検査と予防

 

1 口腔機能低下症とは 原因とお口の衰え

口腔機能低下症とは、噛む、舌を動かす、飲み込むなど、お口の複数の働きが低下した状態です。「こうくうきのうていかしょう」と読みます。歯が痛くなくても起こり、歯が多く残っている方にも関係します。

・年齢とともに、舌や口の周りの筋力が落ちる。

・虫歯や歯周病、合わない入れ歯で噛みにくくなる。

・病気や薬の影響などで、口が乾きやすくなる。

・入院などをきっかけに、食事量や活動量が減る。

このように、原因は加齢だけではありません。例えば、入れ歯の痛みで食べる量が減っている場合は、体操だけを続けても十分な改善につながらず、まず痛みへの対応が必要です。

また、「オーラルフレイル」は、食べる・話すといった働きの小さな衰えが重なる状態を表す言葉です。一方、口腔機能低下症は、検査に基づいて診断する病名です。両者には重なる部分があり、必ず順番に進むわけではありません。年齢のせいとあきらめず、原因に合わせた対策を考えることが大切です。歯だけを見るのではなく、舌や唇、唾液、飲み込みまで含めて、お口全体の働きを捉えることがポイントです。

日本歯科医師会オーラルフレイル対策について

2 受診のサインと全身の健康との関係

お口の変化に気づくには、ほかの人より、少し前の自分と比べることが役立ちます。食べにくい物を無意識に避けていると、ご本人が不便を感じていない場合もあります。

・肉や生野菜を残し、やわらかい物ばかり選ぶ。

・お茶や汁物でむせることが増えた。

・口の中に食べ物が残る、口元からこぼれる。

・パンが口に貼りつく、言葉がはっきり出にくい。

・入れ歯を外して食べる、食事に時間がかかる。

こうした変化が続くときは、歯科医院で相談しましょう。口腔機能低下症は、全身の筋力や体力の低下と関連することが研究で報告されています。噛みにくさから食品の種類や食事量が減ると、必要な栄養を取りにくくなります。

ただし、お口の衰えがある人全員に、体の衰えや認知症が起こるわけではありません。関連があることと、直接の原因であることは異なります。体重が意図せず減っている場合は、歯科だけでなく、かかりつけ医にも相談してください。症状の有無だけでなく、以前は食べていたのに最近選ばなくなった食品がないか、振り返ってみましょう。

3 7つの検査で分かることと受診の準備

口腔機能低下症では、清潔さ、うるおい、噛む力、舌と唇の動き、舌の力、噛み砕く働き、飲み込む働きの7項目を評価します。原則として、3項目以上が基準に当てはまる場合に診断します。

・一つの検査だけで、お口全体の働きは判断しません。

・検査結果と、実際の食事の困りごとを照らし合わせます。

・病名がつかなくても、痛みやむせへの対応は必要です。

検査は点数を競うものではなく、治療や練習の出発点を知るために行います。数値が低いからといって、すべての働きが回復しないという意味ではありません。苦手な部分と保たれている部分を整理することで、対策を選びやすくなります。

受診時は、普段使っている入れ歯とお薬手帳をご持参ください。「いつから」「何を食べるときに」「どの程度困るか」をメモしておくと、状況を伝えやすくなります。食事制限、食品のアレルギー、飲み込みへの不安がある場合もお知らせください。検査前の飲食については、医院の案内に従いましょう。体調が悪いときや、検査の動作が難しいときは、無理をせずスタッフに伝えてください。

日本老年歯科医学会 口腔機能低下症について

 

4 検査①② お口の清潔さとうるおい

① 舌苔付着度検査(ぜったいふちゃくどけんさ:TCI)

舌の表面についた白っぽい汚れの広がりや厚みを観察し、お口の清潔さを調べます。必要に応じて、舌から採取した汚れの細菌量を機器で測る「口腔細菌定量検査」を行う方法もあります。

・歯や歯ぐき、入れ歯の汚れも確認します。

・磨き残しやすい場所に合わせて、清掃方法を考えます。

舌の汚れには、乾燥や舌の動かしにくさが関係する場合もあります。白い部分がすべて汚れとは限らないため、痛みや取れにくい部分があれば、強くこすらずに相談してください。

② 口腔粘膜湿潤度検査(こうくうねんまくしつじゅんどけんさ)

専用の水分計を舌の表面に軽く当て、うるおいを測ります。ガーゼを決められた時間噛み、吸収された唾液の量を重さで測る方法は「サクソンテスト」と呼びます。

・乾燥する時間帯や、食事中の困りごとを伺います。

・薬、口呼吸、水分摂取の状況も確認します。

唾液には、食べ物をまとめて飲み込みやすくする働きがあります。乾燥の程度だけでなく原因も確認し、対策につなげます。

5 検査③④ 噛む力と舌や唇の動き

③ 咬合力検査(こうごうりょくけんさ)

専用のシートや機器を噛み、上下の歯で噛みしめる力を測ります。「咬合圧検査」と呼ばれることもあります。検査方法によっては、残っている歯の本数を基準に評価する場合もあります。

・入れ歯を使う方は、原則として装着した状態で測ります。

・歯の痛みや、入れ歯のずれがないかも確認します。

この検査は主に噛みしめる力をみるもので、食べ物を細かくできるかは別に調べます。数値の基準は機器によって異なるため、異なる機器の結果をそのまま比べることはできません。

④ オーラルディアドコキネシス

舌と唇の動きの速さを調べる検査です。「パ」「タ」「カ」を、それぞれ決められた時間、できるだけ速く繰り返し、発音の回数を数えます。

・「パ」は主に唇の動きをみます。

・「タ」は舌の前、「カ」は舌の奥の動きをみます。

声の大きさや歌の上手さを評価する検査ではありません。話すときだけでなく、食べ物を口に取り込み、舌で動かすための働きを確認します。うまく発音できない場合は、説明を受けながら取り組みましょう。

6 検査⑤⑥ 舌の力と噛み砕く働き

⑤ 舌圧検査(ぜつあつけんさ)

小さな風船状の器具を舌と上あごの間に入れ、舌で上に押していただき、その圧力を測ります。

・舌の動きの速さとは別に、押す力を確認します。

・食べ物をまとめ、のどへ送るための力をみます。

舌を自由に動かせても、十分な力があるとは限りません。器具の位置や押し方の説明を受けて行い、痛みや違和感があればお知らせください。結果は、舌の練習が必要かを考える手がかりになります。

⑥ 咀嚼能力検査(そしゃくのうりょくけんさ)

検査用のグミを決められた時間噛み、どれだけ細かくできるか調べます。代表的な方法では、噛んだ後に水で口をすすいで吐き出し、その液に溶け出したグミの成分を測ります。砕け方を見て評価する方法は「咀嚼能率スコア法」と呼びます。

・歯、舌、頬などが一緒に働いた結果を確認します。

・噛みにくさを客観的に確かめ、治療の参考にします。

検査用のグミは飲み込まず、スタッフの指示に従ってください。飲み込みに不安がある方や、食品のアレルギーがある方は事前にお伝えください。

7 検査⑦ 飲み込む働きと詳しい検査の必要性

⑦ 嚥下機能評価(えんげきのうひょうか)

「EAT-10(イートテン)」や「聖隷式嚥下質問紙(せいれいしきえんげしつもんし)」などの質問票で、むせや飲み込みにくさを確認します。必要に応じて、唾液を繰り返し飲み込む回数を調べる「反復唾液嚥下テスト(はんぷくだえきえんげテスト:RSST)」などを追加します。

・飲み物と固形物のどちらで困るかを伺います。

・食事にかかる時間や、体重の変化も確認します。

・症状に応じて、専門の医療機関での評価につなげます。

質問票だけでは、食べ物や唾液が気管に入っているかを確定できません。また、気管に入っても、はっきりむせない場合があります。「むせないから安全」と自己判断せず、食事中の変化を伝えることが大切です。

詳しく調べる必要がある場合は、専門の医療機関で内視鏡やエックス線の動画を使って確認します。すべての方に必要な検査ではありません。家庭で大量の水を一気に飲むなどの自己検査は避け、むせるときは無理に水で流し込まず、食事の形や飲み方を相談しましょう。

8 菱田歯科医院で行う治療と支援

菱田歯科医院では、口腔機能低下症の7項目を確認し、虫歯・歯周病の治療、入れ歯への対応、清掃やお口の運動の指導などを通して、食べる働きを支えます。

・噛むと痛い場合は、原因となる歯や歯ぐきを治療します。

・入れ歯の適合やかみ合わせを確認し、必要な対応を考えます。

・乾燥や汚れには、保湿や清掃方法を提案します。

・舌や唇の動きには、状態に合った練習を案内します。

同じ病名でも、全員に同じ治療を行うわけではありません。検査結果だけでなく、「肉料理を食べたい」「会話を楽しみたい」などの希望を伺い、生活の中で何に困っているかを確認します。

例えば、噛みにくさの原因が入れ歯と舌の力の両方にある場合は、入れ歯だけを直しても、十分に食べやすくならないことがあります。お口の状態に合わせて、治療と練習を組み合わせることが大切です。一度に多くの課題を増やすのではなく、取り組みやすい内容から相談します。飲み込みの問題が強い場合は、専門的な評価も検討します。歯を失った部分を補う方法についても、残っている歯やご希望を踏まえて、一緒に考えていきます。

9 毎日の予防① 清掃と乾燥対策

歯や入れ歯を使いやすく保つことは、食べる働きを守る基本です。痛みを我慢して片側だけで噛んだり、入れ歯を使わずに食べたりしている方は、早めに相談しましょう。

・歯ブラシに加え、歯間ブラシやフロスを適切に使います。

・入れ歯は外して清掃し、残っている歯も丁寧に磨きます。

・舌は力を入れずに清掃し、真っ赤になるまでこすりません。

乾燥がある場合は、口のうるおいを補いながら原因を確認します。水分制限がなければ、無理のない範囲でこまめに補給し、必要に応じてお口用の保湿剤を取り入れます。

・唾液を出しやすくするマッサージは、方法を確認します。

・薬の影響が疑われても、自分の判断で服用を中止しません。

・鼻づまりや口呼吸が続く場合は、その原因も相談します。

甘い飴や糖分の多い飲料を頻繁に口にすると、虫歯の心配も増えます。乾燥に痛みや腫れを伴う場合は診察を受けてください。定期的な歯科受診で、家庭では取りにくい汚れや入れ歯の状態も確認しましょう。

10 毎日の予防② 舌や唇を無理なく動かす

お口の運動には、舌を前や左右に動かす、唇をすぼめて戻す、言葉をはっきり発音するなどの方法があります。口腔ケアと運動を組み合わせた研究では、一部のお口の働きや飲み込みの評価に改善が報告されています。

・まずは歯科医院で、苦手な動きに合う方法を確認します。

・鏡を見ながら、ゆっくり正確に動かします。

・歯磨き後など、思い出しやすい時間に取り組みます。

・痛みや強い疲れが出る場合は中止して相談します。

例えば、唇を閉じることが苦手な方と、舌で押す力が弱い方では、練習する内容が異なります。回数を増やすことだけを目標にせず、正しくできているか、生活の中で続けられるかを確認しましょう。

全員が同じ回数を行えば、同じ効果が得られるわけではありません。研究の対象者や方法にも違いがあり、体操だけで肺炎や要介護状態を確実に防げるとはいえません。ガムを使う練習や飲み込む練習も、誰にでも適するわけではないため、お口の状態に合わせて取り入れてください。息を止めて力んだり、顎を無理に大きく開けたりせず、その日の体調に合わせることも大切です。

11 毎日の予防③ 食事の工夫と栄養

予防のために、無理をして硬い食品を噛む必要はありません。その時点のお口の状態で安全に食べられ、必要な栄養を取りやすい食事にすることが大切です。

・肉は煮込む、魚は骨を除いてほぐすなど、調理を工夫します。

・卵や豆腐なども取り入れ、食品の種類を保ちます。

・一口に詰め込みすぎず、落ち着いて食事をします。

・むせる場合は、食事の形や飲み物のとろみを相談します。

細かく刻めば、必ず飲み込みやすくなるわけではありません。口の中でばらけてまとまりにくい場合もあるため、噛む力だけでなく、飲み込む働きも考えて調整します。硬さを変えるだけで解決しないときは、歯科医院や専門職に相談してください。

また、食事量が減っているのに、運動だけを増やしても十分な対策にはなりません。食べられる食品、食事にかかる時間、体重の変化を一緒に確認することが重要です。持病による食事制限がある方は、その方針を優先します。必要に応じて医師や管理栄養士と相談し、食べる楽しみと栄養の両方を支えましょう。

12 守口で相談する目安と治療後の確認

守口市・守口駅周辺で、噛みにくさや入れ歯の不具合、口の乾燥などが気になる方は、菱田歯科医院へご相談ください。「この程度で相談してよいのかな」と迷う変化も、受診のきっかけになります。

・予約時に、噛みにくさやむせなどの症状をお伝えください。

・ご家族が気づいた変化も、診察の参考になります。

・急な異常と、徐々に進むお口の衰えを区別しましょう。

急にろれつが回らない、片側の手足に力が入らない場合は、歯科の予約を待たず救急要請が必要です。食べ物が詰まって息ができない場合も同様です。

治療や練習を始めた後は、数値だけでなく「食べられる物が増えた」「食事が楽になった」といった生活上の変化を確認します。むせる場面、乾燥する時間、練習を続けにくい理由も記録すると役立ちます。

改善後も、体調や入れ歯の変化によって状態は変わります。定期受診で必要な検査と計画の見直しを続け、小さな変化に早めに対応することが、これからの食事と会話を守ることにつながります。ご家族は食べる速さを急かさず、本人が感じている困りごとや希望を聞きながら、取り組みを支えてください。

FAQ よくある質問

Q1 歯が全部残っていても口腔機能低下症になりますか

はい。歯が残っていても、舌や唇の動き、唾液の状態、飲み込む働きなどが低下する場合があります。歯の本数だけでは判断できないため、噛みにくさやむせなどがあれば相談してください。

Q2 高齢者だけが気をつける病気ですか

高齢になるほど注意が必要ですが、加齢だけで起こるわけではありません。病気や薬、歯の状態なども関係します。年齢だけを理由に受診を先延ばしにせず、気になる症状が続く場合は確認しましょう。

Q3 検査には痛みがありますか

一般に、口の中を観察する、発音する、器具を舌で押す、検査用の食品を噛むなどの方法で行います。これらの機能検査自体は、通常、歯を削ったり注射をしたりするものではありません。器具への違和感や歯の痛みがある場合は、無理をせずお伝えください。

Q4 入れ歯を使っていても検査できますか

はい。入れ歯を使っている方も評価の対象です。噛む力などは原則として入れ歯を装着して調べるため、普段使用している入れ歯を持参してください。痛い、外れる、噛みにくいといった不具合も一緒に相談できます。

Q5 体操やガムを噛むことだけで治せますか

練習が役立つ場合はありますが、それだけですべての原因を解決できるわけではありません。虫歯や歯周病、合わない入れ歯、乾燥などへの対応が必要なこともあります。飲み込みに不安がある方や顎が痛い方は、自己判断でガムを使った練習を始めず相談してください。

Q6 どのくらいで改善しますか

原因や体調、歯や入れ歯の状態、練習内容によって異なります。痛みの改善と筋力の変化では必要な期間も違うため、一律に何日で改善するとはいえません。食べやすさと検査結果の両方を確認しながら、継続して取り組みます。

Q7 菱田歯科医院には何と伝えて予約すればよいですか

「最近噛みにくい」「食事でむせる」「口が乾く」「口腔機能低下症について相談したい」など、困っていることをそのままお伝えください。ご本人が気づきにくい変化について、ご家族から相談いただくことも受診のきっかけになります。

このコラムに関わる歯科医師

歯科医師 菱田 茂規

患者さまのお話を丁寧に伺い、お口の状態やご希望に合わせて、できるだけ分かりやすくご説明することを大切にしています。虫歯・歯周病の治療だけでなく、治療後のお口の健康を長く保つための予防についても一緒に考えてまいります。気になる症状やお口のお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

<経歴・所属>

・朝日大学 卒業

・大阪大学 第一口腔外科卒業

・日本口腔外科学会

・守口市歯科医師会

・学校歯科医

詳しい経歴はこちら

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